『騙されて、いい気はしないから。』
『え?』
騙す?
『だれが、だました?』
さっきの、何倍も驚いた。
小さな声で、聞いた。
聞かなければいいのに。
『橘が。』
無表情で言い放った。
目を見開いていることに、私自身自分で気づいていない。
『なんで驚いてるの?自覚なし?』
『そんな……つもり…じゃない』
どんな声だったか、覚えていないが、普通ではなかっただろう。
『つもりじゃなくても、嘘ついて思ってもないこと言ってれば、そうなるよ。』
あり得ない。
私が、人を¨騙す¨なんて。
そう、反論出来なかった。
なんだか虚しくなった。
地面に落ちかけていた視線を、岡部に向けて。
『そうだね…。騙してることになるのか。教えてくれて、ありがとう。』
にっこりと笑った。
‘
