「また、その顔。」
私のつくった笑顔に、唯一気付いた人。
私はため息をついて。
「もう癖になってきたかも。」
そう言って、無表情に戻る。
「笑顔が?」
小さく首を振る。
「ううん。人を騙すことが。」
騙すなんて、嫌いな行為だった筈なのに。
最初は、自覚していなかった。
ただ、目立ちたくなくて
演技をしているだけのつもりだった。
舞台でもないのに演技をしている時点で、騙していることになる。
考えたことがなかった。
意識の上にのぼらなかった。
無意識に考えないようにしていたとかでもない。
本当に全く考えなかったのだ。
その事実に、自己嫌悪がする。
時には人を死なせてしまうのに…。
───ねぇ
‘
