BABY×DOLL

大した道のりじゃないのに、あたしは慌ててた。

乗り慣れないせいもあって、電車は逆方向に乗ろうとしちゃったし。
どうにか渋谷へ辿り着いた時、すでに11時。

虎が本当に来ているのか不安になった。

──多分、待たせてる。
怒って帰ったりしてたら…どうしよう!

緊張しながら外に出て虎に電話をかける。

──クセになっているのか、呼び出し音の回数を数えていた。

一回…二回…三回…四回…何度鳴らしても彼は出なかった。

どうしよう
どうしよう…もう帰っちゃった!?

何であたし、もっと早くに来れなかったの!

不安と後悔とショックで…すっかり動揺していて泣きそうになっていた時

あたしは誰かに手を掴まれた。

「ねぇ、時間ある?」

「…?!」

声をかけてきたのは若い男。…ナンパ!?

あたしは困った。困るというよりは、ヤバい!って。

あたし芸能人なのに!

「待ち合わせしてるんです!離してください!」

だけど男は掴んだその手を離そうとはしなかった。

「いいじゃん少しだけだから」

「イヤだってば!」


「オレと遊びに行こうよ!ねっ…セリカちゃん」

名前を呼ばれて驚いた。

あたしが誰だかバレてる…