BABY×DOLL

鷺沼さんは振り返り、初めて会った時のように優しい笑顔で答えてくれた。

「いいよ」

その言葉が嬉しかった。

ちょっと安心して…あたし達は少しだけ彼を見送り、目的地に向かって歩き出した。


琉嘉との会話はなかった。必要な時だけ、一言、二言。

何か話そうとすれば、泣きそうだった。

龍之介は電車に乗っている時も大人しくしていた。

あたし達を乗せた、今日の最終列車が

この非日常的な物語が始まったあの場所がある駅に着く──

いつの間にか、龍之介は眠っていた。
幸せそうな顔に、また少し癒される。

「もうすぐママに会えるよ…」

琉嘉が静かに言った。

静かな深夜。月が空を明るく照らして、まるでこの世にはあたし達しかいないと思える程に

青く静寂に包まれていた。


この天使には──もう会えない。


出会ってしまった後悔や、自分がしてしまった過ち。全てが重くのしかかっていた。

「この仕返しはただ、誰かにツラい思いをさせただけだったね。
虎之介への仕返しにはならなかった…琉嘉も巻き込んだりしてゴメン。迷惑ばかりかけたね」

あたしは琉嘉に謝った。謝っても謝っても足りないくらいだと思ったけど…言わなきゃ。