BABY×DOLL

呼吸するのを
心臓を動かすことを

思考することを

すべてを忘れるくらい彼とのキスに頭がいっぱいになった。

どうしたらいいかわからなくて身体は硬直していた。

それが彼に伝わったのか彼が微かに唇を動かして『キス』という演技をしてるように見せていた。

──もう演技なんかじゃない。

これがKiss…それなりに夢見てた、誰かとのキス。

ほんの二、三秒ほどのキスだったけど
永遠に続くような気がした……




'『小夜…僕が「本当は貴女の事が前から好きだった」と言ったら…どうしますか?』

『え…っ』

『僕のものになってはくれませんか?』'


彼は演技を続けていた。その台詞と共に、またあたしを抱き寄せる。

そしてまた耳元で囁くの…


──好きだよ



ほとんど声なんか出てないのに伝わるの。
もう『小夜』ではなく、すっかり『中森セリカ』に戻っていた。


彼の言葉と、短時間だけど楽しかった会話…彼の優しい笑顔。脳裏に焼き付いて離れなくなっていた。


──これがそうなのかもしれない。


みんなが見てるのに
この瞬間をカメラは捕えているのに



みんなが見守る中


あたしは─恋─に落ちていった…