BABY×DOLL

『さぁ、どうぞ』

彼はにこやかに笑いながら私に手を差し出した。

私はその手と、彼の肩を借りて身を乗り出した。
彼は私を軽々と持ち上げ、下へと降ろす。

…力があるのね
あまり身体は大きいワケではないのに。
やはり男性だからかしら…?

私は少しドキドキした。

『では僕はこれで』

早々に立ち去ろうとした彼を私は思わず引き止めた。

『ま、待って!』

『は?』

『こんな夜更けに女一人で歩いて帰るのは危ないと思わないかしら?』

『僕にどうしろと?』

彼は笑いながらワザとらしく聞いてきた。
ちょっと悔しかったけれど、私は素直にお願いした。

『…送っていただきたいの』

『いいですよ』

彼はわかってて聞いたのだから始めから私を送るつもりだったという事にあとから気づいた。

それから明るい月を見ながら彼と二人で話しをしながら歩いた。
主に私の事ばかり話していたのだけど…

『結婚する事が不満なんですか?』

『…少し。仕方ないとも思うけれど、幸い好きな方も居なかったので諦めるのも早かったわ』

『確かに好きな方がいたのなら辛いですよね』

『──ただ…』

『え?』

『私、一度も恋した事がないのよ』