BABY×DOLL

『もし!そこの方!手を貸してくださらない?』

私の呼びかけに、その人は気づいてくれた。

暗闇から現れたのは若い男。

──あら?

『先ほど中でご挨拶した方ですわね?』

『よく覚えてらっしゃいますね、あんなに大勢客がいたのに』

『あら、だって…』

私より背が低かったんですもの。
私は慌てて話題をそらした。

『でも、お名前が思い出せないわ。ええと…』

彼は少し笑って答えた。

『秋人ですよ。坂上秋人』

『あぁ、思い出しましたわ』

確か、私より年下だった。それにあまりいいお家の方ではなかったのも思い出した。

『秋人さんは、もうお帰りに?』

『まぁ、そうですね。貴女はここで何を?何故、僕に声をかけたんですか』

そう言われて目的を思い出した。

『手を貸してくださらない?ここから降りたいの』

『何故です?』

彼は不思議そうな顔をした。

『私も帰るのよ』

『ドアから堂々とお帰りになればいいのに』

『帰れないから、ここから脱け出すのよ?』

『何故?パーティの主役なのに?』

『…こんなパーティどうだっていいわ。私など必要ないでしょう?父に決められた結婚なのだから』

『…わかりました』