BABY×DOLL

いつものようにメイクをして衣装に着替える。

今日は…あたしが『彼』に恋する日。

…大丈夫。台詞もちゃんと入ってる。
森島さん…『秋人』の台詞だって覚えてる。

ドキドキしながら出番を待った。
入り口から、森島さんが入ってきて声をかけてくれた。

───物凄く静かに。

「セリカちゃん、今日は頑張っていいもの作ろうね」

「はい」

いつものように優しい笑顔を向けられて、少しだけ安心する。

「中森さん!森島さん!お願いします!」

スタッフの声に、ますます現場はピリッとした空気になった。

あたしは立ち位置へと歩き出した。

一歩。また一歩。
近づく度にあたしの中の『小夜』になっていく…

指定された位置に立って、目を閉じた。

そこにはあたしじゃなく小夜がいる。
…誰も居ない。

小夜はこれから…何が起こるかわかってないんだ。

目を開けたら、そこはパーティの真っ最中よ。

結婚するのも、パーティもウンザリしてあたしはバルコニーに出るの。

外に居たのは…目の前にいる秋人だけ。



  「スタート!」
  「カチン!」


また始まりの合図。

───何故か
胸のドキドキは収まっていた…。