BABY×DOLL

何もかもが初めてだった。
あたしは少しずつ集中していって、衣装を着ると'小夜'になった気がした。

…入ってくる

『小夜』が。

あたしと小夜が同化して同じ一人の人間にでもなるかのように。


リハをして、いざ本番へ─────

…どうしよう。
小夜にはなれるけど、みんながあたしをガン見してて緊張してきた。手が震えてる…

人に見られる事は慣れていたはずなのに、またちょっと違うみたい。

心の中を見られてるみたい。
裸を見られてるみたい。


  「スタート!」
  「カチン!」


現場に響いた声とカチンコの音。それがスタートの合図。

そしてあたしは
一瞬で小夜になった。








「カット!」

「…!」

その声にビックリして我にかえった。

…あれっ?
あたし今演技してた?

でも監督も何にも言わないし…
やり直しもないみたい。

ちょっと放心状態で現場の動きを見ていたら、森島さんが近づいてきた。

「セリカちゃん!あれ?大丈夫?」

「え?」

「な、何で泣いてんの!?」

そう言われて涙を溢している事に気付いた。

「わかんない…わかんないけど…」

感情の高ぶりを感じたの…。