『返してよ!!』
彼女の怒りや声にならない叫び声が伝わってきて、少し気の毒に思えた。
10ヶ月も自分の身体の中で大事に大事に育てて…やっとの思いで産んで、やっと出会った子供がいなくなるなんて
私だったら…死にたくなるわね。
「仁奈!」
連絡を受けた森島虎之介が、病室に飛び込んできた。
「虎ぁ…っ!龍之介が…龍之介がぁぁっ!」
彼女は夫にすがった。森島は大体の事情を聞いていたせいか、彼女を強く抱きしめ励ましていた。
「大丈夫だ!絶対、無事に戻るから!」
「虎…っ!あの子を助けてよ…っ」
「仁奈、落ち着いて」
───これが
『森島虎之介』
セリカが復讐したい男
近くで見たのは初めてだった。思ったより冷静だ。
その事に少し違和感を覚えた。
森島が妻を励ましていると、刑事が声をかけてきた。
「貴方が森島虎之介さん…ご主人ですね?」
「…はい」
「向こうで少しお話できますか?」
「大丈夫です。仁奈、少し話ししてくるから待っててな」
彼は彼女の手をギュッと握り、刑事と共に部屋を出ていった。
そして、残った数人の刑事が私達の方へ振り返って言った。

