BABY×DOLL

あんまり時計を見ているのもヤバい。
と言うか…誰かに不思議に思われるかもしれない。

なるべく気にしないようにしていたのに
一分一秒が永遠にも感じられるくらい長く思える…

それと同時に
どこか夢を見ているようでもあった。

本当に私が…子供を誘拐するのだろうか?

セリカと出会ったのも準備したのも夢だった気がしてきた。

一睡もしてないからよね…

ちょっとテンパってるのかもしれない。
仕事はちゃんとしなきゃいけないんだ…しっかりしなきゃ。



夜も深まり、一番暗い時間が訪れた頃

看護師の二人が時計を見て席を立った。

「新生児室行ってくるわ」

───予定通りだ。

この時間にも授乳させるのは、毎日の事だし分かっていた。

ミルクを飲んで眠りについた頃、赤ん坊を連れ出す計画だった。

そして計画通りに事態は進んでいた。

──大丈夫
──大丈夫

上手くやれる。
セリカの手に赤ん坊を渡せる。

ドキドキで心臓が張り裂けそうなのを堪えて彼女達が授乳を終わらすまでの時間をジッと待っていた。

授乳が終わる少し前…頃合いを見計らって私は席を立って一緒にいた看護師に声をかけた。

「トイレ行ってくるわ」