BABY×DOLL

「幸い駅が近いでしょ?南口のコインロッカーに旅行用のバッグを入れて置くわ」

『鍵は?』

「駅のトイレの、一番奥の個室のトイレットペーパーの所に見えないように貼り付けておくから」

『うん。それから?』

「バッグに赤ん坊を入れて旅行へ行く人を装って。それなら始発に乗っても怪しまれないと思うの」

『そっか…そうだね』

「マンションの鍵もロッカーに入れて置くから」

『途中、泣いたりしないかな…』

──確かに、それが心配だった。

「連れ出す前にミルクを飲ませておくけど…時間的に少し厳しいかもしれない」

『場合によっては、あたしが途中でミルクを飲ませなきゃいけないかも?』

「そうね…セリカが途中で授乳出来そうなら、マンションへは遠回りして行ってほしいの」

『遠回り?』

「念の為ね。そうすれば私が迎えに行って、〈上京してきた友達を迎えに来た〉っていう感じに周りに見せたいの。でもそれだと時間がかかりすぎるし…」

赤ん坊にも負担がかかる。
リスクが大きい──

そう思ってセリカにはまっすぐマンションへ向かってもらうつもりだった。

だけどセリカは平然と答えた。

『琉嘉がいいと思う方を実行しよ?』