BABY×DOLL

彼はとても穏やかに眠っていた。

当たり前か…生まれたばかりだもんね。

あんな両親のところに生まれて幸せでしょうね。お金も名声もある…生まれながらにして、誰よりも幸せに近い位置にいる気がする。

なんて…赤ちゃんに嫉妬してどうするの。

自分に呆れながら新生児室を後にして、私は廊下に出ようとした。

少し院内を見てこよう

そう思ったのは…心のどこかで正己に会いたかったから。

好きなんて言うつもりはないけど、日が経つにつれ恨み言も言いたくなってくる。

もっと言ってやれば良かった…

今、偶然出会っても、多分何も言えない自信があるけどね。

考え事をしながら院内を歩いていた時、
薄暗い廊下がのびる先に動くものを見つけた。

…何?
誰かいるのかしら?

入院患者が歩き回っているのかと思い、私は近寄ろうとした。

その『人物』は私に気づいた素振りを見せ、慌てた様子で走り去ろうとした。

──様子がおかしい!

『ちょっと!待ちなさいよ!』

一応、頭はハッキリしていたらしく私は小声で言った。

もちろん言ったって待つワケがない。

私は走り強引に掴みかかって、その人物を捕まえた。