BABY×DOLL

「寝てないでしょ!映画の事、考えてた?」

遠藤さんの鋭いチェックにあたしは素直に話した。

「うん…」

「どう?やってみる?」

「あたしに演技が出来ると思う?それよりキスシーン…濡れ場もありそうなんだけど」

「セリカならできると思うわよ?それにチャンスだと思わない?」

「チャンス?」

「今のアイドル路線でもミュージシャン路線でもいいけど…大人の女になるにはいいタイミングだと思ったのよ。

こういう今までとは180゜違う事をしてイメージを変える事も出来るし、さらに活動の幅を広げられるしね」

「うーん…」

「この仕事だって長く続けられるわよ?」

遠藤さんも社長も、あたしの事を考えてくれてのことなんだって思った。

そりゃ商品なのだから当たり前なのかもしれないし、儲ける為に色々やりたいのかもしれないけど。

あたしは芸能界で生きていきたい。

彼らは売れるタレントが欲しい。

お互いの利害が一致してるのよね?

「そーだよね…仕事続けたいもん。あ~…キスシーンかぁ…」

やっぱそこにこだわっていた。

「そうだ、相手役・ほぼ決まってるんだって」

「だ、だ…誰っ?!」

「森島 虎之介くんよ」