いつものように、会長を乗せた
車は走り出し、その高級車と
菫はすれ違う。

窓の外を見つめていた会長は
菫に気がついた。

「停めろ、さっきの・・・」

庵に近づき、彼と手を繋ごうと
した朱莉だったが彼を呼ぶ声に
立ち止まる。

「イオリ」

私は、あの時のように
先輩を呼んだ。

振り返った彼に、私は駆け寄り
彼の胸に頬を寄せた。

「イオリ
 
 あなたに逢いたかった」

「すみれ」

庵は、愛しい菫を

そっと抱きしめた。