その時、電車の

『ガッタンゴットン』

という音よりも大きな声
が聞こえた。

「やめろよ、やめろ」

その声に驚いた男性は
やっとその手を離した。
   
私の手に触れる

優しい庵先輩の手・・・
  
彼は、私を引き寄せ

駅に着くまで、彼の傍に
居させてくれた。

「大丈夫か?」
   
見上げた私は、彼の目を
見つめて言う。

「はい
 
 ありがとう
 ございます」

彼の優しさに触れて

心は落ち着いて行く。

彼の胸に頬を寄せて

彼の香りに酔う。