飴色蝶 *Ⅰ*

寝ぼけ顔で欠伸をする彼
  
ドアに頭を寄せて
目を閉じる彼

暑いのかブラウスの
ボタンを外す彼

切った髪の襟足に
手で触れる彼

私は、いつも

彼だけを見つめていた。
 
そんなある日、私が
最寄の駅から電車に
乗り込むと、既に先輩が
電車に乗っていた。

今日はどうしたんだろう

そう思いながら乗り込む
人に押された私は

いつの間にか彼との間に
男性一人を挟む程の距離
にいた。

こんなに近くにいては
庵先輩の事を見上げない
限り、彼を見れない。

諦めた私は、俯いて
電車に揺られていた。