飴色蝶 *Ⅰ*

黙りこむ庵の横顔を見て
敏感な彼女は察知する。

「貴方には、彼女よりも
 もっと大切な人がいるのね
 その人のことを、貴方は
 心から愛している
 
 馬鹿ね、貴方も彼女も
 愛なんてものは、いつかは
 消えてなくなるのに
 
 初めて貴方を見た時、私と
 同じ匂いがした
 愛なんて必要のない人だと
 思ったのに」

「確かに、俺は昔、人を愛する
 事から目を逸らしていた
 俺を好きだと言って縋る女を
 馬鹿げている、煩わしいと
 さえ思ったよ
 
 おまえと同じように愛なんて
 いらないと本気で思っていた
 でも、それは、ただこの俺が
 臆病者だっただけ
 失うのが怖くて、本気に
 なれなかった
 ただ、それだけの事だ」  

「貴方に愛なんてものを
 信じさせた、その人の事が
 腹立たしいわ」

巴の言葉を受けて

庵の口元が一瞬緩んだ。