マンションの前に停まる車の傍
に要は立ち、二人に頭を下げた

手を離そうとした私の手を
庵は、強く握り締める。

「カナメ、すみれを職場の近く
 で降ろしてやってくれ」
 
「はい、解りました」

微笑む要は、後部座席のドア
を開いた。

「イオリいいよ、私は電車で」
  
「もう少しだけ、俺といて」

「うん」

二人が車に乗り込む姿を、遠く
から見つめる会澤組若頭の新。

彼は昨晩から、ずっとその場所
に居続けて菫の姿を探していた

庵が菫に会いに来た事も

彼は知っていた。

彼自身も、どうして自分が
こんなに彼女に惹かれるのか
分からなかった。

ただ、彼女の声が聞きたい。

ただ、彼女に触れたい。

ただ、それだけ・・・