夜になり目覚めた庵は
菫の姿を探した。

「すみれ」

名前を呼んでも、返事はない。 
   
「すみれ・・・」

辺りを見渡しても

彼女は、どこにもいない。

不安に思った庵は、慌てて
菫に電話をかけようとした
その時

会長の言葉を思い出す。

『お前は今、女に現を抜かして
 いる場合じゃない
 
 女を作るなと言うんじゃない
 絶対に本気にはなるな
 
 極道に惚れられた
 その女も不幸になるだけだ』

携帯電話を握り締めた、庵。

「くそっ、一番の馬鹿は
 この俺だ」