あの音をもう1度

今は--



「まぐれだよ」




この才能に感謝している自分がいる。





「…なぁ。これからどうするんだ?」



「えっ?」



「奏が再びピアノを弾いてくれるのは嬉しい。

でも、ただ弾くだけでいいわけ?」




これから・・・・


昨日の今日だし、そんなこと考えてもいなかった。







「…もう1度、コンクールに出てみないか?」










ドキッ!



嫌な感じに胸が高鳴った。




「コンクール…」



コンクールにはいい思い出がない。



また暗い過去が頭によぎる。





「確かに奏にとっては悪い思いでばかりで嫌かもしれねぇ。

けど、それを乗り越えないと駄目だと思うんだ」