「…ちぇっ。こんなとこまで堂々と…」
「あら?仕方ないじゃない。
大切な人が行ってしまうのに、じっとしていられなかったんでしょ。
--じゃあね、奏。体に気をつけてね」
そんな2人の会話を聞き流し、私は呆然とするしかなかった。
多くの人が行きかう中、ただその人しか目に入らなかった。
その人はお母さんたちに一礼し、少しずつ近づいてきた。
「詩乃さん達に気を使わせちゃったね」
「ど、どうして・・ここに…」
見送りには来ないでって言ったのに・・・
「ごめん…。いてもたってもいられなかった」
そう眉を下げて笑う。



