まぁ、昨日は卒業式ってことで女子に人気な涼太はもみくちゃにされてまともに話せなかったけど。 でも、あの日の約束があるから大丈夫。 「あれ?お父さんは?」 さっきから姿が見えないけど… 「正則さんなら今朝早くに行ってしまったわ」 えっ?なんで? 「『奏には負けていられない』って。 ほんと…音楽が好きな人だから」 そういうお母さんはおかしそうに、けど目は寂しそうだった。 ・・・私は知ってる。 お母さんがお父さんをどれだけ愛しているかを。 どれだけ仕事姿のお父さんを愛しているかを。