あの音をもう1度



この気持ちを伝えたいのに言葉が出てこない。


ただ涙が相変わらず流れるだけ。




すると涼太はふっと柔らかく笑った。




「いい加減泣きやめよ」



「だ、だって~…」



自分だってびっくりしているんだから。


人はこんなにも泣けるんだって。




「ったく。--奏、嫌なら拒めよ」



えっ--…





「んっ・・・」



--。

一瞬、何がおこったかわからなかった。



でも、それが“キス”だとわかるのに数秒もかからなかった。





・・・・暖かい。


嫌なことなんて全くなかった。


むしろ嬉しいよ・・・涼太。





会場内に響く拍手を聞きながら、私はそっと目を閉じた。