もしかして…心配してくれてたの?
それで、わざやざ控え室まで
来てくれたの?
私を気遣って――
暖かい手。
冷たくなった手と心を涼太の
体温がとかしていく。
「涼太っ・・・・私・・・・」
本当は不安で仕方がない。
いくら気持ちで“大丈夫”って言いきかしても
体が…過去の体験が私を引き止める。
こんな気持ちでピアノなんて弾けない。
一体どうしたら・・・・
そんな私を分かっていたように涼太は口を開いた。
「大丈夫。奏のこの手はみんなを幸せにできる力を持ってる。
だから…奏は自分が望むように弾けばいい」
私が・・・・望むこと・・・・?
「…俺は、観客席から奏を応援している」
そう言って涼太はどこかに行ってしまった。
私は、ただ立ちつくしていた。
私は・・・・私の望むことは---