「でもね…、どうしたらいいかわからなかった。

奏はピアノを拒絶する。

けれど、あなたの目は少しずつ色を失い寂しそうにピアノの部屋を見つめる。
母親なのに助けてあげられなかった」



「お母さん…」



知らなかった。


そんな風に思っていたなんて…





「でも最近、奏が少しずつ変わって来て…、涼太くんのおかげだったんだね」


お母さんは私に近づいて、優しく頬を撫でてくれた。




「もう1度、頑張ってごらん。お母さんは応援するよ」








“ポロッ…”



私が何かを言う前に
目から1粒の涙がこぼれた。




どうして…?


どんなにつらくても人前では泣かなかったのに…