「いつも思っていた。お前はどこか違うところを見ていると」

小さく呟く政宗の言葉に、私は何も言えなかった。

「いつも、いつかどこかにいなくなりそうで、不安でたまらなかった。まぁ…実際、いつもどこかにふらふらといなくなるからな。探すのは一苦労だったが」

言われて幸姫は苦笑いを浮かべた。

「本能寺から戻ってきても、お前はいつも、違うものを思い、見ていた。俺ではない、別のものを」

政宗の言葉に、ちくりと胸が痛んだ。

「だが」

そっと体を起こし、また、キスをする。

「お前はこうして、俺を選んだ」

政宗の真剣な眼差しに幸姫は小さく頷いた。

「お前の口から、聞きたい。一生、俺と共にこれからを歩んでくれるか?」

「…はい」

小さく答えた幸姫の言葉を聞き、政宗はぎゅっとまた、抱きしめてきた。

「一生、離さぬ。もう、一生…」

「うん」

政宗のすこしあつい涙が、首筋を伝った。