気がつくと、カラスの鳴く声が聞こえてきて、顔をあげると辺りはすっかり夕焼け色に染まっていた。


あぁ…もうそんな時間なんだ。


ズキズキと痛む頭をさすりながら、幸姫は川の水で顔を洗った。

「これからどうしよう」

どこかに当てがある訳でもなかったのだが、政宗や小太郎に今顔をあわせるのが辛かったから。
小十郎の家に帰るのは、何となくしたくなかった。

「どうしよっかなぁ…」

そう呟いたときだった。


チクリと首根っこに痛みを感じた。

「…!?」

痛い、と思ったのも束の間、ぐにゃっと視界が歪む。

「な…に……?」

薄れていく意識の向こうに、黒い人影が見えた気がした。