お母さん、そんなこと言うような人じゃないし、多分一生、言われることなんてないと思ってたから。



「…お父さんだと思うのはやっぱ無理」


幸村はじっと、幸姫を見つめる。


「私の中で、父親っていう存在はもう、昔にいなくなった。母が…れいちゃんが、私の母親で、父親だったから」

女で一つで育ててくれた母。本当に大好きで、感謝してもしきれない。



あぁ…きっと、心配してるだろうな…


そう思うと胸の奥がきゅうっとなった。


「だから、父親じゃなくて、とりあえず、友人になってくれると嬉しい、かな」

「こ…幸姫!!」

「あはは、苦しいよ」

ぎゅっと抱き締めてくる幸村に、照れながら幸姫はちいさく笑った。