「来い」

自分の方に向くことなく、ただ短くそう言われて、幸姫は少しムッとした表情を見せる。

「…いきなり人を拐ってきておいて、その言い方はないんじゃないですか?政宗さん」

幸姫が言うと、政宗は小さくくっと笑った。

「拐って何が悪い?」

政宗の言葉に目を丸くする。

「そんなことはどうでもいい」

そう言って、政宗は馬からおり、幸姫の腕を掴むと、スタスタと歩きだした。