「ま、とりあえずそれは置いといて、幸姫様、俺と一緒にお出かけしない?」

「は?なんで」

「だって今、暇なんだろ?」

間髪居れずににやりと笑いながら聞いてくる佐助に、幸姫は声を小さくしながら答える。

「いや、暇だけど…」

暇だ暇だと呟いていた所を(たぶん)目撃されている。
暇じゃないという方が無理だった。

「じゃぁ丁度いい。ちょっとそこまで…」

言いかけたところで、スッと佐助の姿が消えた。

「え!?消えた!?」

驚いて辺りをキョロキョロしていると、ふと、影のようなものが出来ているのに気づいた。

「…真田の猿。此処で何をしている」

振り返ると、そこには鬼のような形相で仁王立ちしている小十郎の姿があった。

「あ、パパ」

幸姫が嬉しそうに笑って言うと、ごん!と拳骨をお見舞いしてきた。

「いたぁ!」

「誰がパパだ!」

「あらら、片倉の旦那。今日はお早いお戻りで」

けらけらと笑う佐助。
すでに屋敷の周りを囲む塀の上に居た。

「貴様、此処で何をしている」

小十郎に聞かれて、佐助は少し肩をすくめて見せた。