「小十郎」

冷ややかな声が、今度は男性の後ろから聞こえてきた。
ふと、男性の顔を見ると、さっきまでの威圧感はどこへやら、今度は男性がすっかり萎縮しきっていた。

「女性に対して何をしているのですか？」

ガシッと目の前で、小十郎は頭をつかまれて、ぎりぎりと締め上げられる。

「ご…ごめ、喜多姉…い、痛い！」

じたばたと暴れる小十郎に、喜多はふふっと笑いながらも、その手を緩めなかった。
幸姫はただ、ぽかんと口を開けてその様子をていた。
と、今度は喜多が幸姫の方を向いてにっこりと微笑んできた。

「ごめんなさいね、うちの愚弟が…ほら、ちゃんと謝りなさい」

ぐいっと小十郎は頭を押さえつけられる。

「…すまなかった」

ぶすっとした表情で小さく答えると、喜多が静かに呟く。

「小十郎」

喜多の声のトーンに、幸姫と小十郎はビクッと身体を震わせた。

「すいませんでした！」

小十郎が謝ると、幸姫も慌てて、ごめんなさい、と頭を下げた。