「姉上、本気でおっしゃっているのですか?」

困惑した表情で小十郎が聞くと、喜多はにっこりと笑って頷いた。

「何か問題でもありますか?」

「い、いえ…」

小十郎はちらりと向かいでご飯を食べる幸姫と喜多を何度も交互に見やった。

「暫くこの屋敷に滞在するのです。ましてや、怪我人の療養もしなくてはなりません。ならば、幸姫殿にも働いていただくのが一番よいでしょう?」

ころころと笑う喜多に、小十郎は何も言えなかった。

「それに、あなたの田畑も、そろそろあれが頃合になるでしょう?」

「あぁ…そうですね」

少し心配そうな表情を浮かべながら、小十郎は小さく溜息をつくと、手に持っていた箸を置き、幸姫の名前を呼んだ。

「明日は大事な俺の畑の手入れの仕方を教える。ちゃんと手入れをするんだぞ」

「は、は…ぃ…」

小十郎の目が鋭く光る。
私は思わず萎縮して、小さな声で返事をした。

「声が小さい!」

「は、はい!よろしくお願いします!」

小十郎に言われて、私は思わず背筋がぴんと伸びる。


だ、大丈夫かな。
なんかへましたらおっさんに殺されそう。


「…なんだ?」

まるで私の心を見透かしたかのように、小十郎が怪訝そうに聞いてくる。

「へ?い、いや!なんでも!」

私は慌てて首をふった。