ふと通りかかった花屋の中を覗き込み、壁に掛けられた時計を見る。


「やっべ…!遅刻だ…!」

くだらない主婦の話に歩みを緩めた自分に苛立ちながら、走る速度を上げる。



ったく、なんか今日はすんげぇイライラすんな…



高音を上げるアラームの音を思い出して、機嫌がますます悪化していく。


やりたくもないバイトのために、体力を消費せねばならないことも、非常に腹立たしかった。


「くっそ…なんでこんな…っ」



―東京に行ったからってやりたいことが見つかるとは限らんだろう?―


―だけど淳も裕介も東京はやっぱ違うって―


―父さんは反対だ。皆が成功したからってお前もそうとは限らんだろう―


―父さんが何と言おうと俺は東京に行く!こんな田舎でただ腐っていくのなんてまっぴらだ!―





結局、腐っちまう奴は何処へ行っても腐っちまうんだよな。