「はぁ…はぁ…っ」


和やかな商店街を、鬼のような形相で駆け抜ける。

肉体的な寒さなんか、微塵も感じない。

感じるのはただ、肉体をも凌駕するような強い欲望。



「俺の…俺の3億…っ!」


尖った冬の空気の中に、肺の中から言葉を吐き出す。


念のこもった白い吐息さえも、行く手を遮るようで邪魔くさい。



「はぁっ…はぁ…!」


呼吸をする度に喉を刺す凍った空気。

苦しくて立ち止まりたくて仕方ない。

けれど

止まるわけにはいかないのだ。



あの3億円を

再びこの手に取り戻すまでは。