「波音ー!!」



後ろから自分の名前を呼ばれて
振り向くと、




『あ、菜摘ちゃん!!』




自転車に乗っている
菜摘ちゃんがいた。






「波音はいつも歩いてて
ほんと偉いねー。

私なんか、
自転車で通い始めてから
雨の日以外は歩くの
めんどくさくなっちゃってさー」




菜摘ちゃんは、
そう言いながら自転車を降りた。




『偉くなんてないよ!

ただ…自転車が苦手なだけ。』




私がそう言うと、
菜摘ちゃんは不思議そうに、


「なんで苦手なの?」


と聞いてきた。




『あ、特に理由はないよ?
事故とかが怖いだけっ(笑)』




…実は、これは嘘なんだ。




確かに事故は怖いけれど、
本当はもっと
根本的な理由がある。


ただ、それは…

親友の菜摘ちゃんでさえ
言ったことのない、
言えるはずのない理由。





いつかは言わなきゃ、
って思っているけれど、
いざ言おうとすると
怖くて言えないんだ…。




言ったら、
菜摘ちゃんが私から
離れて行ってしまう気がして。