別れ屋



「!……なにその目。あんた、調子のってんの?」

「…いえ、気になったので…」

「分かった!あんたも私を裏切ろうとしてるんでしょ!!そうよ!絶対そうに違いないわ!!」

加奈はもう比亞を信じようともせず、もはや別人と化していた



「そ。あんたは裏切られたの。残念でした」

この声が聞こえるまでは

「…愛華さんと…早紀さん…?」

愛華と早紀であった。
屋上のドアを蹴り開け、閉めもせずに堂々と突っ込んでくる

「…ほら、やっぱりグルだったんじゃない!」

「うん、まあね」

「何調子こいてんだよ、面かせやコラ」

「え、やだ」

加奈の喧嘩口調を屁とも思わず余裕で答える愛華

「やっぱり…あんたも、比亞もグルだったのね!!」

「ご…ごめんなさい、」

「ごめんで済むわけないでしょ!!」


「まあまあ、落ち着こうか」

「あんたが元凶でしょーが!」

愛華の仲介に口を挟む加奈


「今の話を聞いてるとつまり、拓也くんに早紀さんのガセの悪口を言って嫌わせた…っていうこと?」

「あんた盗み聞きしてたのね!?」

「あんな大きな声で叫ばれちゃ嫌でも聞こえてくるんだけど。ま、盗み聞きしようとしてたからいいけど」

「なんでここで話すって知ってんのよ!」

「そりゃもちろん浅原さんに教えてもらってわざわざついて来たんだから」

早紀は別れ屋である園原愛華の変わり様に驚きを隠せなかった
今まで自分に向けてきた微笑や敬語、あれはすべて私が依頼主だったからということ
あの加奈に何を言われてもビクともせず、むしろ愛華の方がキツイ口たたいてること

―これが…別れ屋…?



本人はまだ気づいてないがもう加奈に勝ち目がないことなど気づいている。
それでも、心の中のソワソワが隠せないでいた。





「で?あんたは拓也くんのことが好きでここまで頑張ってきたわけ?」