金曜日



またいつものように笑顔で仕事をしていた。



夕方、葵くんが社員二人を連れて、受付の前を通った。

葵くんはチラっと私を見た。



「桐谷さんて、ほんとかっこいいよね!

今、ふじの事見たんじゃない?」


由佳が私の腕をツンツンした。



葵くんは突然向きを変えて受付の方に歩いてきた。



私の前に立った。



な………何!!???




すると葵くんは片手で優しく私の髪をかきあげた。


「ピアス…つけてんな。

よし」




そして何事もなかったように社員たちのもとに歩き出した。



「何!何今の!ふじと桐谷さんて…どういう関係???」

由佳が興奮して言った。


私だってなんだかよくわかんない関係なんだよ…


ちょっと…!!!


今まで社内では完全に無視していたくせに……!
また突然ドキドキさせて!!!

く〜〜〜〜〜!!!




「葵くん!!!

私は…葵くんの何!!?」





私は…フロアに響き渡る大きな声で葵くんに叫んでしまった。





葵くんは振り向いた。



「婚約者だろ!

寿退社の準備しとけ!!


明日家に挨拶にいくからな!」




私は音がしたんじゃないかと思うぐらい、一気にボッと顔が熱くなった。