久しぶりに日本に帰り、親父はしばらく入院することになった。


もう復帰は難しい。


俺がとりあえず社長代理になって、イギリスは違うやつがやることになった。



引き継ぎをするために早速会社に行った。


それから毎日仕事の事で頭がいっぱいいっぱいになっていた。

そんな時、○○室に受付の女の子が書類を持ってきた。



俺は今、女どころではない…




その時、


その女の子は俺を上目で見た。




ドキ…



名札を見ると【S.FUJIEDA】と書いてある。


ふじえだ…



思わず下の名前を聞いてしまった。

そしたら『すみれ』と答えた。



人違いかな………




俺はそれからまた大量の書類と格闘した。





その日の夜は俺の歓迎会だった。


俺は車だったから酒は飲まなかった。


みんなの話を酔わずにちゃんと聞きたかったし。




しばらくすると受付嬢たち御一行様が入ってきた。


みなさん…ケバい…



一人だけ目を奪われた子がいた。


あ…書類を持ってきた子だ。


「桐谷さん、どの子が好みですか?」


話し掛けてきたこいつの名前は…高城だ。


「女…今は仕事で頭がいっぱいですよ」


俺は笑った。


「ちなみに僕は、あの背が1番小さくて、髪がセミロングの…ほら今、乾杯した右側の子…あの子です」



そうか、高城もあの子か。


「告白したんですけどね、断られました」


高城は悲しそうにビールを飲んだ。


「忘れられない人がいるって。それってただの断る口実ですよね」


「どうですかね…」



「だいたい、高校生がいきなり消えるなんてそんな話し…おかしくないですか?」


高校生…消える……?



「その…忘れられない元カレが…高校の時消えたんですか?」

「らしいです」



「あの子の名前はなんて言うんですか?」



「あ…あの子は…



藤枝すい、すいって珍しい名前ですよね」