++葵++
高校の時、放課後担任に話し掛けられた。
すいちゃんと待ち合わせしているのに…早くしてくれ…
その時、イギリスに留学するようになっていた事を知った。
親が勝手に…
県内トップの公立に落ちた時、
『留学させる、お前はいずれイギリスの支社を任せる事になっているんだ』
そう言っていた親父の言葉を思い出した。
手続きしたのか…もう…
俺はまず、すいちゃんの事が頭を過ぎった。
イギリスに留学したら…もうしばらくは日本には帰れないだろう。
もしかしたら一生…
まだ高校生のすいちゃんに、ついて来いとも、いつ帰れるかわからない俺を待っていろとも言えるわけがない。
どうしようもない現実をどうすいちゃんに伝えようか考えていた時、
隼人とキスしているのを見たんだ。
頭がただでさえ混乱していたのに、完全に俺はパニックに陥った。
しばらく一人に冷静に考えたかった。
結局仲直りしても…俺はもう、すいちゃんのそばにいられないんだ。
そうだ
このまま消えよう。
離れれば…いつかお互い忘れる。
お互い違う人を好きになって
お互いを…忘れるんだ…
きっと
そう思っていた。
俺はイギリスで同じ日本人留学生の女の子と何人か付き合った。
でも…何かが違った。
本気になれない。
俺はこの時初めて隼人の気持ちがわかった。
本気で女と付き合えない
何をするにも…すいちゃんが頭を過ぎって俺を支配する。
結局付き合いは長く続かない。
そんな生活を送っていた時、親父が倒れたから日本に戻ってこいと言われたんだ。



