私、藤枝すい。

自分の名前が大嫌い。


たいして有名じゃない女子大を卒業して、

親のコネで一流企業の本社ビルの受付嬢になって3年目になる。



フロアごとに受付嬢が2人ずつ配置されていて、受付嬢と言う名の女性社員は10名いる。





まるでCAのような制服を身にまとい、

派手目な化粧、

私服もブランドで身をかため、

男性社員からのお誘いも軽くあしらう話術も身につけ、

「○○部は何階ですか?」

と毎日何回も尋ねられても、

愛想よくお答えし、


作り笑いもバッチリ。




私は“純粋のすい”ではなくなっていた。



ま、処女ですが。。。






“すい”と呼ばれるのが嫌で、社会人になってからは藤枝ってことで“ふじ”と呼んでもらっている。



私と受付嬢で組んでいるのは、同期の由佳(ゆか)





「ふじ〜今日も○○部と飲み会だけど…行く?」



お昼休みの後、トイレで化粧直しをしながら由佳が言った。



「私はパス。飲み会はもういいよ…私飲めないからなんか楽しめないし」




「そっかぁ…ふじが行かないなら私もやめよ!

さあ午後も愛想笑いで頑張ろう!」




由佳は伸びをしながら言った。






これが普通の毎日になっていた。


軽く男性からのお誘いをあしらい、

結局…彼氏ができない。。


初めての彼氏が好き過ぎて…

それをどうしても乗り越えるような人に出会えなかった…ていうのが正直なところ。



そんなことじゃ…結婚できないから、もう早く忘れないと…と思ってはいるんだけど…なかなか。


うちの会社は一流企業だから、ここの男性社員と結婚すれば安泰なんだろうし…ってわかっているんだけど…やっぱダメなんだよな…。



葵くん…


消えちゃうなんて…


せめて“別れよう“って言ってくれたら、あきらめついたかもしれないのに…