優しい刻


目覚めたと会社に知らせが行くと、今度は毎日のように見舞い客が訪れた。


「おーい、誠!生きてるかぁ?」

「北垣さん、具合はいかがです?」

同じ秘書科の人間や事務の子、プライベートでも親しい取引先など訪れる客相は様々だ。

「何だか会社にいる気分だよ」

あまりの人の出入りの多さにそう零すと、周囲は「しまった」顔をして顔を見合わせる。

「すみません北垣さん。俺達が居ちゃぁ、せっかくストレスを解消して治療するために入院してらっしゃるのに邪魔ですよね」

「そ、そっか!そうですよね……皆北垣さんが入院されてから寂しがっちゃって。私たちの他にも沢山押しかけましたでしょう?」

男女を問わず慕ってくれる同僚や後輩たち。
両親は海外だし、見舞いは嬉しい。

――……ただ時折、『限度』があるのでは、と思ってしまうが。






「慕われてらっしゃるんですねぇ」

「あ……水野さん」

面会時間が終わった夜の8時過ぎ。ノックして入ってきたのは担当看護師の水野さんだった。

「今時こんなにお見舞いの方がみえるなんて中々ありませんよ?」

「はは、そうなんですか」

慕われているのはとても嬉しい。
ただ、早く治して仕事に復帰したいという想いは一層強まる。