目が覚めると、何故か真っ白い部屋にいた。

何となくまだ頭が重い。

「ん……?」

ゆっくり部屋を見回すと、白いカーテン、小さなテレビ。白いベッドに、左手に繋がれた点滴パック。

少し体を起こしてベッドの頭付近を見遣れば、プレートに自分の名・『北垣 誠』の文字が。


――病院?


そこでハッとして、近くに置いてあった鞄を引ったくるように掴み中を漁った。

携帯を探り当て急いで開くと、律儀に電源がオフにされていた。逸る気持ちを何とか抑え電源を入れて起動させる。
そしてウインドウに表示される数字に全神経を集中させた。

そして、目を見開く。

「――なっ……!!二日も眠って……!?」

「失礼しまーす」

「!」

眠っていると思ったのだろう、来訪者は突然部屋に入って来た。

「あら、北垣さん!目覚められたんですね!」

「あ……えっと」

「担当看護師の水野ありさですー。北垣さん、一昨日の夜倒れられたんですよぉ。貧血で」

「あの、仕事の方は……!」

今はどうしてこうなったかより仕事だ。
すると担当看護師の水野さんは首を傾げて、妖艶な唇で弧を描いて笑った。

「大丈夫ですよー?検査も兼ねての入院になりましたから。会社の方からは充分休むようにと言付かっておりますわ」

だから寝ていなくちゃダメですよぉ、と猫撫で声で言う彼女。

「そう、ですか……」

肩を落として溜息をつく。

そういえば、忙しさにかまけて健康診断も行かなかった。
そのツケが今に回って来たのかもしれない。

電源を入れてやっと届いた新着メールを知らせるアイコンを見つめながら、もう一度諦めたように溜息をついた。