優しい刻


「……でも」

『優美ちゃんは優しいね』

そう言われるのが苦痛になり始めたのはいつだろう。

皆が嫌な仕事を引き受けるのも、泣く友達を懸命に慰めるのも、友達の恋を必死に手伝うのも。

最初はとても満足感があった。
有り難う、と言われると心の奥から温かさを感じた。
求められれば必ず答えた。


けれど、それは所詮。


「分からなくなったんです。『優しさ』と『便利屋』の違いが」


頼まれれば嫌な顔一つせずにこにこして引き受けてくれる便利屋さん。


陰でそう言われているのを知ったのは高校二年生の時だった。
悲しくて夜通し泣いて目を腫らしてしまい、朝起きて美里さんや義妹の由紀ちゃんに心配された。


けれどそれでも、私は頼まれる何かを断ることはできなかった。
それが『優しさ』とは別物だと薄々気づきながら、私は自分を犠牲にし続けた。
やりたくなくても、傷付くのが分かっていても。
嫌われるのが怖くて、止めることは出来なかった――……。


『優しい』とは何なのか。


私は一体何の為に、何をしてきたのか。


全く分からなくなってしまった。