現実は残酷だ。


地球の大きなヒビは思ったり早く進行している。


遅くても明日の夜中には地球崩壊しているらしい。


明日の夜中。


それはあまりにも唐突で早すぎて実感がない。


長老も戸惑いが隠せないようで重要事項を言ってからすぐにマイクから離れてしまった。


でも、私はこの時を待っていたんだ。


ルイもニコニコ笑っている。


私はマイクへ歩み取り、そのマイクを取った。


「あっ、ちょっと伊藤さん!?何やってるの?」


司会のおばちゃんが違うマイクを通して何かを言ってるけど無視。


私は大きく息を吸って前を見た。


・・・意外と緊張するものだね。


「明日・・・宴会開きます。皆で最期を楽しみましょう。」


私の言葉に止まっていた人々から歓声が上がる。


「場所は?」


一人の男の子が聞いた。


「長老会で使っている神社はどうでしょうか?」


私は群衆の中の猫おじさんに聞いた。


猫おじさんは元気よく「いいとも!」とこぶしを突き上げた。


「じゃあ、神社で夕方あたりに宴会を開きます。食べ物飲み物は持参で。

それではよろしくお願いします。」


一礼するとさっきより大きな歓声と拍手が沸いた。


そして、マイクから離れると脇で拍手していたルイが頭をなでてきた。


「子供扱いしないでよ」


頭をなでるルイに私は睨んだ。


「してない、俺が撫でたいから撫でているだけ」


はぁ・・・そうですか。


じゃあ気が済むまで撫でてください。