「良かったよ。お前と赤ちゃんに何もなくって。

だけど、変なことで心配かけるなよ。」


「ごめんねぇ。てか、拓也、私の心配もしてくれたんだぁ。」


「たりめぇーだろ。お前がいてからこそ俺らの赤ちゃんがいるんだから!!」


「なんかカッコよく言ってるけど結局は赤ちゃんが一番大事ってことね…。」


千恵さんは肩を落とし溜息をする。


「なんでお前はそう解釈するんだよぉ。」


“も~”と怒った子供のようにふてくされる拓也さん。


そんな彼を見て、千恵さんは楽しそうに笑っていた。


人はみんな不器用。


そりゃそうだ、何もかも悟っている人間なんていない。


そんな人間の中にも不器用だけど


ちゃんと愛を育んでいる人たちを私は見た。


「あの…いきなりですが…

年賀状、送ってもいいですか…?」


私の目には二人しか見えないものが


彼らの目にはまた一人見える。


それが“愛”の一つなのかもしれない。



「住野ご家族に」



私は幻想ではない愛を

見ることができたのかもしれない。