今更、“家族団欒”とか書かなきゃよかったと思う。


書いて虚しさを感じるだけ。


この世界で幻想は求めちゃダメ。


現実を見つめ、

その現実の中から最期の夢を取り出すべきだ。


…だけど、それが思いつかない。


チャイムから少し遅れて担任の先生が教室に入る。


教室に空席が多いことにも気にしなくなった。


出席簿も取らずによれよれのスーツを着て、

担任は気だるそうに口を開いた。


「転入生が来た。」


え!?


教室が一気にどよめく。


喜びも悲しみもなく、

ただ驚く。


なんでこんな時期に!?


空気読めないだろ。


「ほれ、入って来い。」


担任の手招きに一人の背の高い男子が入ってきた。


「はい、自己紹介よろしく。」


担任、お前が言えよ。


キリッとした目と凛とした容姿はイケメンと言えよう。


「吉田ルイです、よろしくお願いします!」


彼は勢いよく一礼をする。


活気のある声はまるで野球部のようで、

だけど彼の頭にはクリクリとしたクセッ毛が生えている。


「吉田は帰国子女だって。伊藤、あとは頼んだ。」


なっ!!


担任、仕事放棄するな…っ!!