この美しき世界で

「まぁ本気出すってもさ。たいしたもんじゃないんだよね。」


小刻みにステップを踏みながら後退。距離をあける。それから入念に屈伸をはじめた。巨大オークは黙ってそれを見る。


いや見ることしか出来ない。


「ちょっと助走つけるだけだから、ね。」


それだけ言うと彼は地面を割った。蹴る、そういった生易しい代物ではない。


単純なその一点に限るならば彼はセロをしのぐだろう。脚力。


彼の片足が踏みしめた大地は砕かれ、もう一方の足が動いた時にはその姿は消えていた。


「おーしまい。」


ゴキンと。そう嫌な音が響くと巨大な獣はその巨大な頭を垂らした。


瞬間の爆発的加速。それをもってして渾身の一撃を叩き付ける。


走る速度や持久力においてセロに及ばぬ彼の武器。


「あーやっぱ駄目だ。刃が割れちまったい。また金かかるなぁ…。」


加速する力。


「悪いけどさ。立ち止まってらんないのよ。」


ハルバートの尖端で獣をそっと押す。


「お前ごときに。」


復讐の為に身に付けた力。


何が起こったかさえ理解していないだろう獣は地面を揺らし崩れ落ちた。