この美しき世界で

「ちっ…。ほーんとタフな奴。いい加減倒れろっつーの。」


ナツは舌を小さく鳴らした。目の前の巨大オーク身体中に切傷や打撲痕が残る。特に目立つのは打撲痕。


鉄製のハルバートの刃はこいつには通らない。ならば叩き続ける。これはそれをナツが的確に実行した結果である。


「ブキィ!」


巨大オークが槍を振り下ろす。軽い金属音が響かせながら彼はそれを受け流すと横っ面に刃を叩き込んだ。


相手の力を利用したカウンター攻撃。巨大オークの頭が激しく振れる。


「ちきしょー。せめて鍛錬か強化しとくんだった。やっぱ武器も大事。」


ついさっきまでの考えに若干の後悔を覚えながら彼は溜め息をついた。


純粋な力でいえばやはり魔族には敵わぬが槍術に関していえばナツに大きな分がある。


正直、勝つ方法は幾らでも思いついた。けれどそれを実行しなかったのは。


「もう面倒くさい…。仕方ないからちょっと本気出してやるよん。」


実戦訓練。慢心ではない。枷を科した状況で自らがどれだけ通用するかを試している。


それを止めたのは、飽きた。ただそれだけの理由。ナツはそういう男だった。