この美しき世界で

斬撃は巨大な片耳を削ぎ落とした。次に頬肉、次に指。


おおよそ致命傷には成り得ない部位へ。嵐の如く撃ち込まれていくそれは巨大オークを飲み込んでいく。


「ブァァァァァァッ!」


身体にまとまりつく小蝿を嫌がるかのように巨大オークは身をくねらせる。全身を駆け巡る痛み。


自らを遥かに凌ぐ速度と圧倒する斬撃の数と正確さ。防御は許されず。倒れることは叶わず。それはさながら生き地獄。


「グバァッ!!」


口の中を満たした血液を吐き出しながら吠える。痛みを無視し、全力の一撃をセロに向け叩き込む。


しかしそれがもたらしたのは獣にとっては更なる衝撃。金属の擦れる音。放った槍の一撃はか細い刃に防がれている。


単純な力でさえ、敵わない。


「ふぅ…。これが全力か?」

「ブ、ブキィィィィィィ!」

オークは吠えた。最後の絶叫にふさわしい猛々しい声で。巨体に見合った巨大な咆哮。


「終わりだ。」


バツン、と小気味良い音が響く。それっきり首を落とした巨体が身を動かすことはなかった。


「言ったろ?自慢の剣だってさ。」